電流帰還アンプに合わせたスピーカー設計

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説明

山本式電流帰還アンプ に関して、いろいろネタを提供しています。

ここでは、スピーカーを電流駆動するために、従来から設計手法を変えなければいけない話を書きます。

なぜかオーディオ界の主流はスピーカーを電圧駆動する

なぜ電流帰還アンプにこだわるのか? にも書きましたが、webmasterはスピーカーに供給する電流に比例して、コーン紙が空気を押す力を発揮すると考えています。

ところが、なぜかオーディオ界ではスピーカーを電圧で駆動する発想で設計しているところが多々あります。 ここでは、スピーカーを電流で駆動することを前提に、従来から設計手法を変更しなければならない話を書きます。

励磁スピーカーの改良

励磁スピーカーという種類のスピーカーがあります。 一般的なスピーカーは、アンプの電力をコイルに供給して永久磁石との反発力でコーン紙を駆動します。 励磁スピーカーは、永久磁石の代わりに電磁石を使います。

励磁スピーカーのもう一つの電磁石も、定電圧駆動ではなくて定電流駆動にすべきと提案します。 理由は、アンプを電流帰還にするのと同じで、コイルが作る磁界の強さは電流に比例するからです。

ムービングコイルにアンプ出力を流すと、コイルが動きます。 この時の力は「作用反作用の法則」に従い両方のコイルに逆向きに同じ力がかかります。 コイルを動かすエネルギーは、両方のコイルの磁界が均等に減ることで供給されます。 励磁コイルの磁界を安定させるには、ムービングコイルを動かすために減った電流を即座に復元しなければなりません。 励磁コイルを定電圧駆動していると、電流を安定化させるのに過渡応答が続いて、電源電圧によって安定化までの時間が変化します。 定電流駆動の方が、失った磁界エネルギーを補充する時間が短くてすむと思います。

励磁コイル駆動の電源も、信号駆動アンプと同様のレスポンスが求められるのは、納得していただけると思います。 PWMのデジタルアンプを励磁スピーカーにつなぐと、励磁コイルの電源応答速度がkHzのパルスに追いつかなくて不安定になると予想します。

マルチウェイスピーカーのネットワーク

マルチウェイ(2wayとか3way)のスピーカーには、高音、中音、低音の電気信号をそれぞれの受け持ちスピーカーユニットへ分割するためのネットワークと呼ばれる回路があります。 このネットワークも従来方式は電圧を分割する発想で設計されていましたが、電流を分割するように発想の転換が必要だと思います。

図1 電圧を分割する発想

図1のスピーカーユニットは、高音担当のツイーターと低音担当のウーハーに別れています。 ツイーターに低音信号を流さないため、ウーハーに高音信号を流さないため、それぞれ直列にフィルターを入れていました。 それぞれ、スピーカーユニットとフィルターを合わせたセクションにかかる電圧は共通で、信号周波数によって電流の別れ方や合計値が変化します。

図2 電流を分割する発想

図1は、ツイーターセクションとウーハーセクションの間で、電圧共通、電流は別々でした。 図2は、電流共通、電圧を別々にするため、セクションを直列にします。

Webmasterは、電流駆動でマルチウェイスピーカーに出力する場合、増幅する前にチャンネル・ディバイダーで信号を分けておいたほうが理想的だと考えています。

安直接続の電流駆動2way

図2の回路において、ロー・パス・フィルター、ハイ・パス・フィルターを外してしまうと何が起きるでしょうか?

図3 図2をさらに簡略化した回路

理論上、様々な不具合が予想されます。 以下、リストです。

  • ツイーターユニットに苦手な低域信号が入るので、ユニットを壊す恐れがある。ウーハーに入る高域信号も同様。
  • ツイーターとウーハーの出力効率がマッチしなくて出力バランスが崩れるかもしれない。ここで言う出力効率は、電流に対する出力の話なので、カタログに載っている従来の効率の値とは異なるはず。
  • f特がフラットになりそうもない。

でも、音は出てきそうなので、リスク覚悟で試してみました。 スピーカーシステムには、Stereo誌2014年8月号付録のFostex2wayを使用します。

写真1 直結

配線も単純です。

予想通り、f特がフラットになりません。 高音再生時にジャリジャリいうノイズが聴こえます。 高音信号に対するスピーカーコーンの反応速度が、ツイーターとウーハーで違うのかもしれませんね。

メリットもありました。 音像がピンポイントで定位します。 2wayなのに1wayのように定位してびっくりです。 興味ある方は、リスクを勘案した上でお試しあれ。 ちなみに、電圧帰還アンプやアナログローパスフィルターを搭載した初期のデジタルアンプは電圧基準で動作するため、この方式を試さないほうが身のためです。

こうすればよかった 2018年6月28日追記

写真2 暫定ネットワーク

インピーダンス計算して電流駆動の時の最適ネットワークを模索していたのですが、面倒になったので計算そっちのけで試しに部品をつないでみました。 Webmasterが純粋理論家ではなくて、工学の人であることがもろバレですね。

スピーカーキットに付属していたコンデンサスピーカーキットに付属していたのと同じ容量のフィルムコンデンサを、写真のように接続しました。 ウーハーと並列に接続して、高域信号をコンデンサ側にバイパスします。 高域のジャリジャリいうノイズがなくなりました。 音像のピンポイント定位はそのままに、ハイファイ化成功です。

DENON SC-M39を電流駆動向けに改造する

DENON SC-M39(小型のブックシェルフ 2way)を電流駆動用に改造してみます。

まず、SC-M39のバックパネルを外します。 写真3のように、4本のネジを外して、プラスチックパネルを引き抜きます。 プラスチックパネルは、木製キャビネットに固くハマっています。

写真3 SC-M39のバックパネル

次にネットワーク回路につながる6本の電線をカットします。 ネットワーク回路は捨てます。 部品を再利用するためジャンクボックスに入れても良いのですが、webmasterのジャンクボックスはすでにいっぱいです。 新しい回路は、ツイーターとウーハーを直列に接続し、ウーハーと並列に1uFのフィルムコンデンサを入れます。 スピーカーユニットへの配線で±を間違えないようにしましょう。 先に説明したStereo誌2014年おまけと同じ回路にしました。 新しいネットワーク回路は暫定で、音を出しながら調節します。

写真4 改造後の回路

音出しをしてみました。 長期間休ませていたスピーカーなので、ウーハーのエージングに8時間ほど必要でしたが、ピンポイントに定位し、滑らかでリアルな高音、倍音とリアルな低音が出ています。 第一印象は、成功です。

2019年9月2日追記

地デジを聴いていると、特定アナウンサーの肉声で『ビリビリ』と歪が聴こえます。 ツイーターの共振周波数で、ユニットの振幅が大きすぎるのかもしれません。 周波数分割のネットワークを、再検討してみます。

2019年11月18日追記

図4 ネットワーク回路

先の問題を解決するために、ツイーター周りにネットワークを追加しました。 特定の肉声で『ビリビリ』言わなくなりましたが、評価中です。

掲載日

2018年6月26日 初出

2019年11月18日 追記


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