電流帰還アンプを試していて、経験したことや感想をまとめてみます。
※あくまで個人の感想であり、全ての人に効果を約束するものではありません。
アンプの方式別に出音の傾向を書いてみます。
アナログ/デジタル | 方式 | 感想 |
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アナログ | 電圧駆動で電圧帰還 | オーディオファンならば聞き慣れた音。 中域が強調されやすい。DVDやBlu-ray、地デジなどの映画のセリフが聞き取りにくい。 |
山本式電流帰還 | 低中高全ての音が聴きやすい。小さな音もよく聞こえる。 | |
電流駆動で電流帰還 | 低中高全ての音が聴きやすい。デジタルの特許方式そっくり。 | |
無帰還 | 設計と実装が良ければ、山本式電流帰還と同等の音が出る。 | |
デジタル | 初期のPWM(1サイクル中に±のパルスが必ず組で出力されていてスピーカー出力の手前にLCのLPFが入っているもの) | 低域は山本式電流帰還アンプ以上だが、高域の伸びに欠ける。 |
最近のPWM(1サイクル中に±どちらか一方のパルスが出力されていてスピーカー出力の手前にLCのLPFが入っていないもの) | 低域は山本式電流帰還アンプ以上だが、高域にノイズが聞こえる。 | |
ΔΣを電圧増幅 | PWMよりも高級アナログに近い滑らかな音が出るが、小音量再生が難しい | |
PDM webmasterの特許 | アナログ山本式電流帰還とデジタルPWMのいいとこどり。 |
音源別に出音の傾向を書いてみます。
音源 | 条件 | 感想 |
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アナログ | LP/EP | 『パチッ』とか『シャリシャリ』などのノイズを除けば、適切なアンプを使うことでCD並の音が出せる。 |
CD | ごく初期の低音量レベルアナログマスター | 市販の機材で再生すると、ディテールの欠けたぼやけた音になる。 第13回1bit研究会で発表した『中田式D/A変換』を用いるか特許方式を用いると、同じマスターテープのレコードと同じ音が聴ける。 |
1980年代 | 多くの人が聞き慣れている音。デジタルPWM方式を除けば、大抵の機材で同じ音が出る。 | |
1990年代以降にマスタリングされた流行曲 | 電圧帰還アンプで聴くと普通だが、山本式電流帰還、無帰還、デジタルアンプで聴くと低音が出すぎ。 | |
PCM | DVD Blu-ray | 電圧帰還アンプで聴くと映画のセリフやコンサートの観客の声が聞き取りにくい。 出力にパルス状のノイズが乗ることがある。 |
ΔΣ |
D/A変換方式別に出音の傾向を書いてみます。
入力信号 | 変換方式 | 感想 |
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PCM | BurrBrownのDAC LSI | 同じCDDA音源でも、ソフトウェアで丁寧にオーバーサンプリングしたデータを送ると、より高音質に聞こえる。 |
ESSのDAC LSI | BurrBrownと比較して高域のノイズ感が減るが、音色にキャラクター付けがあってポップス向きに聴こえる。 | |
フルデジタル | 高域と少音量再生時にノイズ感がある。 | |
ΔΣ | ΔΣをアナログLPFに通す | 高域にノイズが乗って、ピアニッシモでジュルジュル聴こえる |
中田式D/A変換フルデジタル 特許方式 | 今まで試したD/A変換の中では最高。ジュルジュルノイズが発生する条件がある。 |
この理由は、一般のオーバーサンプリング型DAC(BurrBrownブランドに代表される)の内部オーバーサンプリング処理で用いられるディジタルフィルタの演算精度が低いからと予想されます。 詳細は、第13回1bit研究会で発表しました。 録音レベルが低いほど、演算精度の影響が大きくなると考えています。
Webmasterの手元では、ソフトウェア32bit浮動小数点精度で8191タップのFIR処理していますが、いい音が聴けます。 一般の人が同じ音を聴きたかったら、CDをリッピングして、Audacityでレベル調整して、高精度のオーバーサンプリング処理をしてからNOS(Non Over Sampling)型のDACで再生すると、同等の音が聴けるでしょう。
この理由は、いくつか想像できますが確信はありません。 Webmasterが考える理由は以下です。
ちなみに、ディスコ、クラブなどのダンス音楽向けにリミックスされた音源の低音強化の話をしているわけではありません。 一般的な流行音楽の話です。
こちらに理論を書きました。
デジタルアンプ最終増幅段が、きれいな矩形波を出力できないからと考えます。 グラフやオシロスコープ上で長方形に見えるパルスが出て欲しいところですが、FETの応答速度は無限大ではないので、パルスの立ち上がり、立ち下がりがなまって、波形歪となります。 初期のLPFを組み込んだデジタルアンプでは、1サイクル中に+パルスと−パルスが組になって出ていたので、歪が打ち消し合っていましたが、最近では+だけ、ーだけの出力になり、歪が無視できなくなりました。 歪の影響度合いが大きくなるのは、PWMパルス長が短い時なので、高域のノイズとして聴こえるものと考えています。
この問題は、webmasterが2017年に取得した特許で解決しました。 詳細は、Kindle書籍で説明しています。
ΔΣで低レベルDCを表現しようとすると、可聴帯域の偽信号が出てしまう話は、『エレキ工房No.5』に書きました。
フェードアウトはDC成分ではありませんが、低レベルの低周波数信号がノイズの原因になっているのでしょう。
ちなみに、同じ信号をwebmasterの手元で352.8kHzのPCMに高精度変換すると、聞こえなくなります。
352.8kHzを11.2MHzのΔΣに変調してから特許方式で聴いても、フェードアウトノイズは消えたままですが、2.8MHzのΔΣに再変調すると復活します。
ノイズの出方に偏りがあることに気づきました。
早い話が、PS3を使ったSACDのリッピングがまだ合法だった頃にリッピングしたDSFフォーマットのデータだけにノイズが乗ります。
どうやら、PS3を使ったリッピングツールのどこかでDSFフォーマットを誤って解釈してビット並びを間違えているようです。
DAC LSIの入力信号からwebmasterの自作ツールでキャプチャーしたDSDIFFファイルの再生では、ノイズは乗りません。
その後の調査で、2017年前半にwebmasterがコーディングした再生アプリのソースコードがなくなっていることが判明しました。 2017年6月にコンパイルしたバイナリでは、DSFファイルの末尾を問題なく再生できていたのですが、2018年2月に確認したところソースコードもRCSにチェックインしたファイルも日付が古くなっていて、バグがあります。 デバッグしたところ、DSFファイルの末尾も問題なく再生できました。
DAC LSIがCDDAを精密にD/A変換できていない疑惑を確認するためのツールを こちらに用意しました。
Webmasterが確認したところ、ESSやBurrBrownのDACから電圧帰還アンプを通しても、精密な変換でよりディテールが聴き取れるようになりました。 「そんなものはプラシーボ効果に違いない」と言い張る人は、自分の耳で確認してください。
続きは暇ができたら書きます。
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ヘッドフォンの能率が違うと、同じ音量を再生するときでもアンプ出力がかわります。 この能率と残留ノイズの関係が、デジタルとアナログで違うという話です。
アナログアンプの出力では、残留ノイズ出力の原因は二つあります。 最終増幅段の入力にノイズがあるときと、増幅段回路由来のノイズです。 入力にノイズがある場合は増幅されるだけで、信号とノイズのS/Nは入力でも出力でも同じです。 増幅回路由来のノイズは出力一定で、そこに音声信号が乗ります。 音声信号が大きくなるほどノイズの比率が下がります。 増幅回路由来のノイズは、ヘッドフォンの能率が低いほうがS/Nが良くなります。
Webmasterの作成したデジタルアンプでは、出力で電源電圧が変動することがノイズ原因になります。 低能率のヘッドフォンでは、同じ音を出力するのにより大きな電力が必要になり、電源電圧変動が大きくなります。
あくまでwebmasterの作成したアンプでの話ですが、アナログアンプではヘッドフォンの能率が低いほうがS/Nが良く、デジタルアンプではヘッドフォンの能率が高いほうがS/Nが良くなります。
2018年2月14日 初出
2023年5月27日 変更