スピーカー共振時の電圧電流比

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説明

スピーカーのインピーダンス絶対値の周波数変化グラフで、共振時にピークが出ることを説明します。

この説明は、多くの仮定を導入していますので、仮説としての信頼性は低いです。 実測して確認する必要があります。

出発点

スピーカーに伝わる駆動力で、共振時に無限大のエネルギーが要求され、電圧も電流も無限大になれない話をしました。 でも電圧駆動の時V固定で⊿Iが大きくなると、共振時にインピーダンス線図は極小値ピークを作るはずです。 実際には極大値のピークが出る理由を、ここで考えます。

電圧と電流の位相差

スピーカーに伝わる駆動力に、f0以上の周波数では過渡応答から定常状態へ位相がπ変化する話を書きました。

スピーカーの電流駆動理論に、スピーカーのインダクタンス成分のせいで電圧が電流よりもarctan(ωL/R)だけ位相が進む話を書きました。

図1 電流よりも位相がπ/4進んだ電圧のグラフ

図1にsinカーブの電流(赤い線)と位相がπ/4進んだsinカーブの電圧(青い線)を書いてみました。 横軸は位相で単位はDegreeです。 共振時に過渡応答から定常状態へ遷移するときと、再生周波数が高くなった時に、位相差π/4の状況が発生します。

電圧と電流の位相がずれても、電流がsinカーブを描く限りは電圧もsinカーブになります。 その意味では、スピーカーに伝わる駆動力に書いたVまたはIが有限値なのに⊿Iまたは⊿Vが無限大に発散する状況は計算上ありえません。 すると、インピーダンスもピークを作らなくなってしまいます。 まだ、見落としがあるはずです。

仮説 アンプが逆電流を出せないとどうなるか

電圧駆動で測定して、V-I比がf0でピークを作る理由を考えます。

スピーカーユニットが期待する電圧と電流の符号の組み合わせが+とーに分かれたときを考えてみましょう。

アンプの設計によっては、電圧×電流が負の時出力電流がゼロになります。 インダクタンスの作る電圧V = L dI/dtですから、電流が急にゼロになる時大きな電圧がインダクタンスに発生します。

図2 逆電流を出せないアンプでの電圧、電流シミュレーション

図1に2本の線を追記して図2にしました。 青が電圧で赤が電流のとき、電圧と電流の符号が逆転した時電流が止まると、黄色い線になります。 さらに、電流の時間微分値が電圧になるとすると緑の線になります。

図2はざっくりしたモデルで、緑の線はパラメーターにより縦方向に伸び縮みします。 それでも、電流が急に止まったり出たりするところで電圧のピークが出ることはわかっていただけるでしょう。 これが、共振時にインピーダンスピークとなる理由かもしれません。

この仮説の弱点

先にも書いたように、電圧と電流の位相差が発生する原因は、2つあります。 共振時に過渡応答から定常状態へ遷移するときと、信号周波数が高くなったときです。

電流が急に止まったり出たりすることが電圧ピークの原因だとしても、高周波数でもピークがでてもよさそうです。 共振時だけで電圧ピークが強調される理由はあるでしょうか?

強力で決定的な証拠は出せませんが、可能性のいくつかをあげてみます。

  • 電圧スパイクが大きくなるのは、電流最大からゼロに落ちる時すなわち位相差π/2のときで、共振時に起きやすい
  • 共振時には、力学的パラメーターのゆらぎ(バネ定数Kが一定値ではないとか)で、位相差が0とπの間を頻繁に行き来するのかも知れない
  • 実は、高周波数になるに従ってインピーダンスの上昇する線図に電圧スパイクの影響は織り込み済み

共振時に電圧/電流比がピークとなる仮説を立てました。 多くのパラメーターを無視して、多くの仮定を積み重ねているので、仮説としては弱い方です。 映画“Lethal Weapon”のセリフを引用するならば、“Probably nothing”“Very very thin”といったところでしょうか。

仮説の続き 電流NFBで考えてみる

『誠文堂新光社』の『強くなる!スピーカー&エンクロージャー百科』P.172の記述を引用します。 『定電流駆動はインピーダンスの測定のときに使います.第3図(B)のようにして抵抗rに流れる電流を一定にするとよいわけで,rの電圧降下でコンプレッサーを働かせます。 こうするとスピーカーの端子電圧が,インピーダンスに比例しています.』

引用の第3図

Webmasterの主張を注意深く読んできた人は、ツッコミどころ満載である文章に気づくと思います。 ツッコミを一旦保留するとして、重要な点は、「インピーダンス測定時に第3図(B)の回路を使用している」と書かれていることです。

電圧入力、電圧出力のアンプを使っていて、電流に比例した電圧をNFBに入力しています。 電圧と電流の符号が反転した状態では、NFBではなくて、PFB(Positive Feed Back)になってしまいます。 もしも、NFBループのゲインが1を超えているのであれば、『電圧と電流の符号が逆転した状態』では、PFBによって出力電圧は、最大振幅になってしまいます。

PFBで電圧が最大振幅に振れる様子

PFBで電圧が最大振幅になる様子を図示しました。 出力信号振幅1V、最大振幅12Vを想定しています。

どうやら電圧駆動を主張する人たちは、この大きなパルスを含んだ電圧を均して、出力電圧と呼んでいたようです。 このパルスは、電圧と電流の符号が逆転した状態で出ます。 f0付近で電圧と電流の位相差がふらついている時と、ωが大きくなって電圧と電流の位相差が増えた時に発生します。

スピーカーのインピーダンスグラフなるもので、高域に行くとインピーダンスの絶対値が大きくなるのは、インダクタンスの影響よりもPFB電圧の影響の方が大きそうです。 今まで、インピーダンスグラフから読み取ってきたインダクタンスの値も、信用できなくなりました。

状況証拠

ここで説明した現象を体験している人がいます。

電圧と電流の逆転を無視した電流駆動アンプ

電流でスピーカーを駆動して音楽を聴いてみる実験

回路こそ違いますが、電圧と電流の符号が逆転した状態でPFBになっているのは同じです。 引用します。 「一言で言うと、ポンポンカンカンとした締りの乏しい音です。通常の電圧駆動に比べると耳障りな感じです。」

今でも第3図(B)の回路でインピーダンスグラフを書いているとするならば、測定時にスピーカーから変な音が出ているはずなのですが、測定者は気づかないのでしょうか。

山本式電流帰還アンプはどうなの

山本式電流帰還アンプも第3図と同様の回路を用いているのですが、同様の問題は発生しないのでしょうか。 Webmasterが考える所、聴くに耐える山本式電流帰還アンプはNFBループのゲインが1未満で、最大振幅まで振れることが無いと思われます。 ゲインが1以上ならば「ポンポンカンカンとして締りの乏しい音」が聴こえることでしょう。 電圧駆動アンプで電流帰還を試すときは、NFBゲインを低く抑えることが重要だと思います。

結論

実測して確認したほうが良いでしょう。 スピーカーの電圧と電流でリサージュ図形を描いてみれば、ここの仮説の検証はそんなに難しくないと思います。

トラ技2018年10月号P.96の図1にも、インピーダンス絶対値が共振周波数にピークを持っています。 このグラフを書いた筆者、三菱電機の森田創一氏にCQ出版社を通して質問中です。 5月20日に質問して6月19日現在未回答です。 果たして返事は来るのでしょうか? 期待しないで待っていましょうね。

2019年6月21日追記

森田氏へ質問を取り次ぐはずのCQ出版社仲井氏が、病気で長期療養していたためまだ質問を送っていないそうです。 これから質問を送るそうなので、森田氏からはこのWEBに2019年6月21日現在かかれていることと矛盾しない回答が来るはずです。 待ちましょう。

2019年6月22日追記

森田氏から返答が来ましたので、掲載します。

ご質問いただいたp.96図1は、一般論で説明する事を目的としたグラフで、とあるメーカの3Wayシステムの実測例から引用したものであります。 元データの出典は、旧職場の退職者守秘義務に抵触するので公開不可ですが、スピーカのパラメータは大手メーカでもデータが公開されており、いずれも似たような位置にf0が存在しております。

質問した項目は、グラフを描くための測定条件なのですが、阿部晋三なみの信号無視話法が返ってきました。 さすが三菱電機のエンジニアですね。 「みんなが間違っているからオレ一人が悪いわけじゃない」とでも言いたいのでしょうか。

納得行かないので森田氏に以下の再質問をしました。

再質問1
「元データの出典は、旧職場の退職者守秘義務に抵触するので公開不可ですが」と ありますが、社外秘の調査方法で調査した結果をグラフだけ示して読者に説明責任 を果たしたと言えるのでしょうか。むしろ自民党の政治家のように、間違いを主張 しつつ反論を封じているように見えてしまいます。

再質問2
「スピーカのパラメータは大手メーカでもデータが公開されており、いずれも似た ような位置にf0が存在しております。」とありますが、それぞれが社外秘の手法で 調査した結果のグラフ形状だけを比較して、「似ている」という理由だけで正しい と主張する根拠にはならないのでは無いでしょうか。

どうも、森田様は私の電流駆動理論を正しく理解していらっしゃらないようです。 再度私のWEBを詳細に読み込んでからご回答ください。

2019年6月25日追記

CQ出版社仲井氏が、「質問を転送しない」と言い出しました。 メールの表現を引用します。 「再質問の件ですが,本誌上で通常の読者さんにお願いしている手順で行って頂けないでしょうか.」 「なお,説明の中にもありますが,回答を保証するものではありませんので,その点についてもご了承ください.」 だそうです。

自分に都合の悪い質問を転送しないのは、報告書を無かったことにした麻生金融相と同じ発想ですね。 本当に悪いのは、検証不可能なグラフを悪用して物理学的に誤った記事を書いた森田氏です。 Webmasterは三菱電機時代の上司に、「このような状況で返答を返さないということは、自分の間違いを認めたうえ、何を言われても構わないという意思表示である」と教わりました。 返答が返ってこなければ、森田氏が間違いを認めたうえ何を言われても構わないと意思表示したと受け取ります。 森田氏は「質問を転送しないCQ出版社が悪い」とか言い訳しそうですが、意識だけ高い系に言わせれば「そんな出版社に記事を書いたほうが悪い。自己責任だ。」という話になります。

2019年7月28日追記

2019年7月28日現在、森田氏からの返答は来ていません。 森田氏も所属する(所属した?)三菱電機で教わったルールを適用して、森田氏は自分の間違いを全面的に認めたうえ、何を言われても構わないと意思表示したとみなします。

2019年6月3日 初出

2019年7月28日 追記


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