D級アンプには、アナログLPFを搭載しているものがあります。
Webmasterは、このD級アンプのLPFを通して聴いた音に違和感を感じてきました。 違和感の原因を探るため、LPF特性を数式で追ってみます。
頭を使わない力技の計算です。 計算量が多いので、webmasterが計算違いをしているかもしれません。
書籍 本田潤著『D級/ディジタル・アンプの設計と製作』のP.264回路図から、D級アンプのLPF回路例部分を取り出したのが図1(a)です。 この図をスタートとして、インピーダンス計算をします。 図1(a)にインピーダンス変数として Z1 から Z6までを割り当てたのが図1(b)です。 V1 V2 は電圧、 I1 I2 I3 I4 は電流を示します。
図1(b)から方程式を立てて、連立し解きます。 目的は、出力電流 I4を入力電圧差 V1 - V2 で表現することです。 Z1 = Z4 Z2 = Z3であることも利用しました。
インピーダンスZに、実際の回路素子の定数を代入します。
Z1からZ6を、抵抗R、インダクタンスL、キャパシタンスCの組み合わせで表現します。
R L Cに具体的な数値を代入すると、周波数で変化するゲインと電流-電圧位相差がグラフ化できます。
Z1からZ5には、図1(a)の定数を代入します。 Z6には、スピーカーユニットFE103Enの値として、スピーカーの電流駆動理論から 8[Ω]+240[μH]を代入します。 すると、ωの多項式が出てきます。 プログラムを書いてωを20Hzから20000Hzまでスイープさせてグラフ化してみました。
上はゲインのグラフで縦軸はdBです。 下は位相差のグラフで縦軸はdegreeです。
電流は周波数に反比例して減少しています。 これはD級アンプも電圧駆動方式で設計されているためです。 スピーカーユニットにかかる電圧をグラフ化すれば、ほぼ平坦になるでしょう。 電圧駆動方式なので、フルレンジスピーカーユニットを駆動すると高域ほど出力が減ります。
グラフにデコボコしている部分があります。 ゲインは、15kHzオーバーに小さなピークがあります。 位相差は1.1kHz付近で大きく変化し、15kHzオーバーでも変化があります。
D級アンプのLPF特性は、スピーカーユニットのインピーダンスと合わせてシミュレーションした限り、ゲインも位相差も高域で暴れていることがわかりました。 比較試聴したわけではないので断定できませんが、聴感上の違和感の原因かもしれません。
「D級アンプの出力はパルスになるから、可聴帯域の特性図を書いて何になる」と主張したい人がいるかもしれません。 そういう人は、ノイズパターン比較のFFT出力と合わせて考えてください。
2020年8月26日 初出