ノイズパターン比較

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説明

D級アンプやΔ∑信号で、本来の信号と異なるノイズがどの位出るのか、理論値で比較してみました。

PCMと352.8kHzスイッチングのD級アンプと11.2896MHzのΔ∑信号の比較です。 プログラムのシミュレーションで、11.2896MHz区切りの信号を64bit浮動小数点精度で作り、FFTにかけてみました。

  • もとの信号は、1378.125Hzのsin波です。 周波数が半端なのは、11.2896MHz区切りで8192サンプルごとの繰り返しになるからです。
  • 繰り返し信号なので、FFTするときに窓関数はかけていません。
  • グラフの横軸に示しているのは0Hz〜20kHzです。 20kHzを超える部分は、理想的なLPFで遮断できているという前提です。
  • 縦軸のdBは常用対数の20倍です
  • D級アンプとΔ∑はノイズシェーピングがかかっています
  • ノイズが0になるところは-∞dBとなってグラフからはみ出してしまうので、便宜的に-200dBとしています

まずはPCM信号

グラフ1 PCM再生時の周波数分布

PCM再生時の周波数別成分分布です。 奇数次の高調波だけが出ています。 3次高調波、5次高調波、…13次高調波まであって、15次は20kHzオーバーなのでありません。

高調波は-150db付近ですね。 ビット精度にすると、25bit精度位です。 今回のシミュレーションでは波形データをIEEEの32bit浮動小数点精度で格納しているので、25bit精度になります。 計算が合いますね。

20kHzオーバーまでグラフ化すれば、折り返しノイズが沢山見えることでしょう。

D級アンプの信号

グラフ2 2値PWM再生時の周波数分布

初期のD級アンプが採用していた2値PWMです。 2次から14次までの高調波が-50dB付近に出ています。

グラフ3 3値PWM再生時の周波数分布

改良された3値PWMです。 偶数次の高調波が減っていますね。

一般的なΔ∑信号

グラフ4 1次Δ∑変調信号再生時の周波数分布

もっともシンプルなΔ∑変調器で変調した信号の可聴帯域部分です。 -70dB以下に高調波がでていますね。

グラフ5 2次Δ∑変調信号再生時の周波数分布

2次のΔ∑変調器で変調した信号の可聴帯域部分です。 グラフ4にホワイトノイズを足したような形をしていますね。 聴感上は、「じょりじょり」といったノイズが乗っているように聴こえます。

グラフ6 ゲイン-6dBの2次Δ∑変調信号再生時の周波数分布

信号強度を半分にしてから、グラフ5と同じ変調器に入れたときの出力です。 高調波がなくなって、ホワイトノイズ成分だけになりました。 ノイズレベルも-100dB以下なので、数字上は1次変調器よりも減っています。

特許方式 3値のΔ∑信号

グラフ7 1次Δ∑変調を3値化して再生時の周波数分布

ほとんどグラフ4と同じです。

グラフ8 -6dB入力の2次Δ∑変調を3値化して再生時の周波数分布

グラフ6よりもノイズが増えてしまいました。 高調波もありますね。

S/N比と出力比較

方式全帯域S/N比[dB]可聴帯域S/N比[dB]
PCM-24.9-146
2値PWM0.01-43.0
3値PWM-5.65-44.5
1次Δ∑0.00-59.7
2次Δ∑0.00-49.2
2次Δ∑-6dB入力8.45-101.5
1次Δ∑3値-5.64-56.4
2次Δ∑-6dB入力3値1.93-61.1

S/N比と書いていますが、すべての値はノイズ量を信号強度で割った値です。 ノイズが少なければ、値も小さくなります。

表の『可聴帯域S/N比』の項目が、一般オーディオマニアの気にするS/N比に相当します。 耳に聞こえる信号と耳に聞こえるノイズの比率です。

表の『全帯域S/N比』の項目は、スピーカーやヘッドフォンを駆動する時のエネルギー効率に相当します。 この項目が+ということは、再生信号のエネルギーよりもノイズのエネルギーの方が大きいわけです。 ただし、可聴帯域S/N比は全部マイナスになっているので、耳には聴こえません。 出ていったノイズは、アナログLPF回路で遮断されて電源へ戻ってくる方式もあります。 スピーカーまで行ってしまって、コイルやコーン紙あたりで熱に変わっているかもしれません。

『全帯域S/N比』がマイナスということは、効率の良い駆動方式となります。 3値PWMと1次Δ∑3値がそれぞれ約-6dBなので、出力ノイズが出力信号の半分になる高効率駆動方式と言えます。

スピーカー駆動方式としてアナログLPF回路無しで使える3値方式の中では、2次Δ∑-6dB入力3値の可聴帯域S/N比-61.1dBが最も成績よいですね。 でも、エネルギー効率から行くと、1次Δ∑3値の-56.4dBも捨てがたい。 たかが-56.4dBと侮るなかれ。 このS/N比で聴感上好成績を収めているということは、アナログ回路によるスピーカー駆動がどれだけ歪んでいるかという話にもなります。 まだまだスピーカー駆動方式の改良の余地はありそうですね。

2020年9月15日追記 小信号入力

Webmasterは、CQ出版社の書籍『エレキ工房No.5』P.44のコラムに、「Δ∑の小信号は可聴周波数帯域のノイズになることがある」と書きました。 それを、ここで確認してみます。

ここまで出てきたのは、1378.125Hz 0dBの信号でした。 信号振幅を-52dBにして、同様のFFTをしてみます。

PCM小信号

グラフ9 PCM -52dB再生時の周波数分布

PCM再生時の周波数別成分分布です。 0dBの時と比べると、高調波ノイズがちょうど52dB分ふえているような様子です。

D級アンプの小信号

グラフ10 2値PWM -52dB再生時の周波数分布

初期のD級アンプが採用していた2値PWMです。

グラフ11 3値PWM -52dB再生時の周波数分布

改良された3値PWMです。

どちらのPWMも、0dB信号の時と比較してノイズが相対的に+52dB増えているわけではありません。 これならば、-52dBの信号もなんとか聴けそうですね。

一般的なΔ∑の小信号

グラフ12 1次Δ∑変調 -52dB信号再生時の周波数分布

もっともシンプルなΔ∑変調器で変調した信号の可聴帯域部分です。 高調波が約52dBふえましたね。 14次高調波が特に強く出ています。

グラフ13 2次Δ∑変調信号 -52dB再生時の周波数分布
グラフ14 2次Δ∑変調信号 -62dB再生時の周波数分布

2次のΔ∑変調器で変調した信号の可聴帯域部分です。 0dB信号や-6dB信号のときには、高調波以外のノイズは高域ほど強くなっていました。 こちらでは、低域から高域までほぼ一定の-45dBのノイズが出ています。 -6dB信号の時は最も強い高域ノイズで-100dBでしたから、S/Nの劣化は52dB以上になりますね。

特許方式 3値のΔ∑小信号

グラフ15 1次Δ∑変調 -52dBを3値化して再生時の周波数分布

ほとんどグラフ12と同じです。

グラフ16 -62dB入力の2次Δ∑変調を3値化して再生時の周波数分布

2値Δ∑信号と違って、3値の2次Δ∑は信号がノイズに埋もれそうですね。

小信号S/N比と出力比較

方式全帯域S/N比[dB]可聴帯域S/N比[dB]
PCM-24.9-93.0
2値PWM55.74.74
3値PWM27.2-2.9
1次Δ∑55.59-3.7
2次Δ∑55.05-17.7
2次Δ∑-6dB入力61.0-11.69
1次Δ∑3値27.2-2.8
2次Δ∑-6dB入力3値43.22.7

2値PWMと2次Δ∑-6dB入力3値では、可聴帯域のノイズが信号を超えてしまいました。

信号が-52dBに減衰したことに伴う1次Δ∑のS/N劣化は約56dBですが、2次Δ∑-6dB入力では約90dBです。 信号の減衰量を遥かに超えるノイズが発生しています。 他方式と比較すると小信号時の2次Δ∑ S/Nが極端に悪いわけでもありませんから、大信号のときに2次Δ∑はアドバンテージを持つが、小信号では横並びになると解釈できます。

オーディオマニアがよくやるように、小信号出力時にボリュームを上げると、PWMやΔ∑はPCMに比較して分がわるいです。

信号周波数がもっと低くなると、Δ∑変調で出てくる可聴帯域ノイズがもっとひどくなるのかもしれません。 そのうち試してみます。

2020年8月12日 初出

2020年11月3日 修正


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