タイトルを読んで「間違っているんじゃないの?電圧帰還アンプで電流駆動できる?」と思った人が多いでしょう。 そのセンスはまともです。 でも、電圧帰還アンプで電流駆動する意外性がwebのネタになるのです。
以下技術的なネタを書きます。
山本式電流帰還アンプ簡単回路のナゾ にも追記しましたが、完全な電流駆動をできる最終段を、webmasterは設計することができません。
電流駆動の電流、電圧、電力の式をこちらにも掲載します。
電流は単純なsin信号ですが、このsin電流を流すための電圧はちょっと複雑です。 このsin電流信号を負帰還で受け取って、この式にある電圧を出力するためプラスにもマイナスにも電圧を可変できる回路を思いつきません。
でも電圧→電流ならできます。 sin電流信号から出力電圧信号を計算することができれば、その出力電圧を電圧帰還アンプに出力させられます。 電圧帰還アンプの最終段にパワーOPアンプを使用すれば、電圧と電流が符号逆転しても電流を吸い込めるはずです。 RとLの値はスピーカーユニットによって変化しますので、特定のスピーカーユニット専用のアンプになります。
sin信号から電圧信号を計算するところが多少厄介ですが、もう設計を終わらせました。 こんど秋葉原に行ったときにパワーOPアンプを購入して1ヶ月位で実装する予定です。 ご期待ください。
LM675を使って、電圧帰還アンプを作成しました。 これにAD1856を経由した16bit352.8kHzfsのPCMを入力しています。 電圧計算で必要になる電流の微分値は、元のPCM信号を一つ前と比較した差分を利用しています。
結論から言えば、成功です。 電流駆動の音が出ています。 正確に言うと、精密な電流駆動を実現したのは今回が初めてで、特許方式のフルデジタルアンプと非常に近い音が出ています。
出音の印象を簡単に書きましょう。 電圧駆動のアンプでは出音が『平板』になるのに対し、電流駆動では『深み』のある音が出ています。 f特がフラットになった影響でしょうか、楽器の音やヴォーカルの声がリアルに聴こえます。 レコーディング・エンジニアが加えた控えめのリバーブもしっかり聴き取れて、音場が広がります。 この2つの効果のおかげで、音楽全体として深みのある音が聴こえます。 楽器間のバランスも、申し分ありません。 電圧駆動アンプでも、ボリュームを上げると音のディテールがより聴こえるようになるため、大音量になるほど電流駆動アンプとの違いが少なくなります。
今回の試験では、電圧の計算式にFE103Enの特性グラフから読み取った大雑把なレジスタンス値、インダクタンス値を使っています。 この部分の精度を上げることで、よりHiFiにできるかもしれません。
2018年7月19日 初出
2018年7月25日 追記