小音量時の低音再生と駆動方式

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説明

オーディオを小音量で再生するとき、十分な低音がスピーカーから出てこないことがあります。 その原因と対策を考えてみます。

ここでの議論は力学的なので、スピーカーを駆動している力が電圧に比例するのか電流に比例するのかという議論と独立して成り立ちます。

スピーカーのメカニズム

電磁石の原理を使った一般的なスピーカーについて考えます。

空気を振動させるのは、円錐状のコーン紙です。 コーン紙は、アンプからの電力で前後します。 コーン紙は、常に機械的復元力(スプリングなど)で初期状態に戻ろうとしています。 スプリングだけでコーン紙を支えると、一旦弾みを加えたコーン紙は「ぼよよーん」と長い間弾んでしまいます。 この弾みを抑えるために、抵抗力も必要です。 物理学で言うところの「減衰振動」に相当する条件です。

制御

大学の理工学部で「制御工学」を学んだ人にとっては、ここの話はごく当たり前です。 「減衰振動」なんて現象はアチコチで出てきます。 自動車のサスペンションも「減衰振動」ですね。 タイヤが障害物を乗り越えるときの衝撃を和らげるためにスプリングをつけます。 スプリング(厳密に表現するならバネ上重量)がいつまでも弾んでいないように、ダンパーで振動を減衰させます。

モデル化

以上を踏まえてモデル化したものが、図1です。

図1 コーン紙の力学モデル

バネ定数は一定値をとるのか?とか単純な摩擦だけ考えて十分か?といったモデルを単純化しすぎたきらいはありますが、議論のスタート地点としてのモデル化です。

摩擦が及ぼす作用

コーン紙を駆動するときの摩擦が及ぼす作用について考えます。 駆動力が小さいときは、静止最大摩擦に負けてコーン紙が動きません。 コーン紙が動いているときでも、スプリングの復元力と電磁気的な駆動力の和が動摩擦を下回ると、止まってしまいます。

オーディオ再生時の高域と低域を比較すると、振幅が同じなら高域の方は急いでコーン紙を駆動するため強い力が必要です。 低域は少しづつコーン紙を押し出すので、力は弱くなります。

表現を変えると、振幅が同じならば、高域より低域のほうが駆動力が小さくなります。

アナログアンプで小音量ほど低域が再生しにくいのは、駆動力が摩擦に負けるためだとwebmasterは考えます。

DCモーターと摩擦

オーディオの話題を離れると、DCモーターも摩擦で困っていました。 駆動用のアナログ電圧を0Vから上げていくと、ある点で駆動力が静止最大摩擦にうちかち、急に回りだします。 回りだすときの回転速度は高めです。

回転中に電圧を下げていくと、回転を始めた電圧より下までモーターは回り続け、駆動力が動摩擦を下回った瞬間に止まります。

理屈を考えれば当たり前の現象ですが、使い勝手は悪いですね。 そこで考えられたのが、PWM駆動です。 DCの最大電圧か0Vをパルスの形で与えて、パルス長(デューティー比)で回転速度をコントロールします。 電圧がかかっているときは常に最大電圧で静止最大摩擦を超える駆動力がかかりますが、0Vの間はモーター回転が落ちます。 パルスを高周期で加えれば、今まで不可能だったスロー回転も可能になります。

デジタルアンプと摩擦

オーディオのデジタルアンプも、DCモーター駆動と同様にPWM制御です。 瞬間的に最大駆動力をかけたり、力を0にしたりを繰り返しています。 そのため、デジタルアンプは、アナログアンプよりも小音量での低域再現性が良くなるのです。

ただし、従来のデジタルアンプではパルス波形がきれいな方形波にならないために、高域再現に問題があります。 Webmasterの特許はこの高域再現を改善するものですが、その話はKindle書籍に書きました。

ラウドネスと低域再現

ラウドネス特性のうち低域を持ち上げる必要があるのは、ここに書いたようにアナログアンプが小音量での低域再生を苦手としているからだと思います。 高域を持ち上げる必要がある点について、電圧駆動方式の欠点だという話はすでに書いています。

力学的な問題はまだある

ここでは摩擦の話を書きました。 スプリングによる復元力とその固有振動の話とか、最大駆動力をかけたときコーン紙はどこにいるかと言った話も、スピーカーに伝わる駆動力へ書きました。

2018年8月13日 初出

2019年5月23日 表記修整


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