MP3 を責めないで

MP3 というデータ型式があります。 ディジタルの音楽データを圧縮して保存する型式です。 私は、このフォーマットが嫌いです。以下、詳しく論じます。

MP3 は CD と同じフォーマットのデータを、 1/10 のサイズに圧縮します。 圧縮するときに、情報の一部が失われます。 この失われたデータによって、音が劣化するのです。 例えば、私の好きなロックで説明しましょう。 音楽の中心に位置するヴォーカルやギターは、それらしい音がします。 いや、元の音と聞きくらべても、違いに気づかないくらいです。 その裏で、いろいろな音が劣化しています。

たとえば、ドラムス。 ドラムの「スタン、トン、スタタン、ドン」という音色がすっかり失われて、 「ザ、ザッ、ザザッ、ザー」というノイズに変わってしまうのです。 ロックでこれだけ変わるのだから、オーケストラなんかどうなることでしょう。 私は、特に良い耳を持っているわけではありません。 聞き比べをしたときも、安物のノートPCを使いました。 本物の HiFi システムにつないだら、その違いはもっとあきらかになるでしょう。 確かに、ラジカセ程度のスピーカーだと違いがわからないかも知れませんが、 2000円のインナーイヤーヘッドフォンで違いがわかるのですから、 音の劣化は大きいです。

まあ、最近の風潮として、 HiFi にコダワル人よりも手軽さを求める人の方が多いことはわかります。 それでも、悪いものは悪い。 こんな音は聞きたくありません。

私は某オーディオメーカー で、 ディジタル音声圧縮フィルタ作成の仕事をしたことがあります。 このときの経験を元に言えば、多くのプログラマは音質に無頓着です。 また、ディジタル音声フィルタをプログラムするエンジニアの多くが、 自分のあつかうフィルタに対して技術的理解が足りません。 詳しい話は、技術論になってしまうし、楽しい話でもないから割愛しますが、 音質の悪いディジタルフィルタが多い理由が良くわかりました。

そういえば、こんなことがありました。 某オーディオメーカーが、 自分の会社で作った紫色のパソコンを売り込むためのCMの話です。 「音楽の好きな友人宅へ行ったら、CDの内容を全部PCに入れてしまったそうで、 いらなくなった100枚のCDを全部もらえた。」 というシナリオでした。 これは明かに変です。

変なところは、

こんなところです。 このようなCMを作ってしまうところで、 某オーディオメーカーの浅知恵がばれてしまいますね。 しかも某オーディオメーカーは、大手音楽レーベルの親会社なんですけど。

MP3 に似た音声圧縮技術に MD の ATRAC があります。 ATRAC については ATRACよお前もか で論じています。

そんなわけで、私は MP3 が嫌いです。多分使うことは無いでしょう。 私は MP3 に生まれなくて本当に良かったと思っています。(このオチかよー)

2001年9月6日 記


back button もどる