ジッターの話

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説明

オーディオマニアの好きなパワーワードに『ジッター』があります。 デジタルオーディオの動作原理も知らずに、「ジッター」と騒いでる文系オーディオマニアもいて、webmasterはちょっと不満でした。 ここでは、そのジッターについて書いてみます。

ジッターとは

「いつかジッターについて解説しなきゃ」と思っていたのですが、webmasterより簡潔でわかりやすい説明をネットに見つけたのでリンクします。

誤解していませんか!? クロックジッターの「真実」を解説

「技術的にも正しいし、緻密だ」と思っていたら、河合一氏の解説文でした。

補足説明

河合氏の説明で、webmasterが「ちょっと違うんだよね」と思う所を補足説明します。

マスタークロックの作り方

DAC LSIにジッターの少ないクロック信号を入れるためには、マスタークロック信号の精度が重要です。 自作するとわかるのですが、マスタークロックを水晶発振にするのが理想的です。 PLLで低ジッターを作るのは、河合氏が説明した方法がありますが簡単には使えません。 「安くは作れません」と言い換えてもいいです。

S/PDIF入力では、入力データの整数倍の周波数を持ったマスタークロックをPLLで作らなければなりません。 入力データとマスタークロックがずれていると、再生が早すぎて入力データが足りなくなったり、逆に入力が多すぎてバッファが溢れたりするからです。

入力がCDプレーヤーに限定されるのであれば、大量のデータバッファと水晶のマスタークロックを搭載して、ある程度データが溜まったところで再生開始する荒業もあります。 でもこの方式では、TV出力のように画面と音声が同期しなければならない時に使えません。

原子時計

精密なマスタークロックとしてオーディオ界では原子時計(大抵はルビジウム発振)を使うこともあります。 ちょっとググってみましたが、ルビジウムの固有振動数は見つけられませんでした。 セシウムの固有振動数が9192631770Hzだそうですから、ルビジウムもGHz帯だと想像します。

その周波数をオーディオ機器に使うため、10MHzにPLLで変換してから出力しています。 オーディオ機器内部では入力の10MHzを内部で24MHzや22.05MHzにまたPLLで変換します。 2回のPLLを経由してジッターはどのくらい増えるのでしょうか。 測ったことはありませんが、いつか測ってみたいです。

原子時計を元にしたクロックでは、1秒間に出てくるパルスの数は正確でしょうが、一つ一つのパルス波形はPLLを経由していることが気になります。

GPS

GPS信号には、時刻情報があります。 この時刻情報も原子時計を基準にしているので、ルビジウムクロックの代わりに使う人がいます。

厳密なことを言うと、人工衛星から自宅まで届く遅延とか、高速度で移動している人工衛星のドップラー効果などを補正しなければならないので、技術的には高度なことをしています。

そこまでして取り出したGPSの時刻情報も、長い目で見た時のパルスの数は正確ですが、一つ一つのパルス波形はPLLに依存します。

USB DAC

河合氏の解説ではUSB DACについて踏み込んでいませんでした。 USB DACへのデータ伝送は、シンクロナス(同期)式とアシンクロナス(非同期)式があります。 シンクロナスとアシンクロナスの違いはわかりやすいので、オーディオ雑誌でもさんざん取り上げられました。 Webmasterもエレキ工房No.5に書いたおぼえがあります。

USB2.0のハイスピード伝送では、データ伝送とは別に1/8000秒ごとにクロックに相当するパケットが流れます。 このパケットタイミングでPLLを動かしてマスタークロックを作るのがシンクロナス伝送です。

USB DACの筐体内部に水晶発振器のマスタークロックを持って、入力データをバッファリングしながら再生するのがアシンクロナスです。 今ではアシンクロナスの方が作りやすくてジッターが少ないので、たいていのUSB DACがアシンクロナス方式です。 アシンクロナス方式では、動画再生する時に画像と音声をシンクロさせるのがちょっと面倒なのですが、一般ユーザーはそのズレをあまり気にしないようです。

非同期マスタークロック

ESS社のDAC LSIや旭化成社のAK4137など、入力データとマスタークロックが同期していないLSIがあります。

詳細は公開されていないのでwebmasterの想像を書きますが、入力データをオーバーサンプリングしてマスタークロックに同期したローパスフィルターで処理しているのではないでしょうか。 この方式なら、入力I2Sのビットクロックにジッターがあるのは無視できます。 LRCKにジッターがあるとちょっと不利ですし、LRCKとマスタークロックが整数比でないことも不利ではありますが、ローパスフィルターを上手に作れば目立たないでしょう。

非同期のマスタークロックを許しているLSIでも、同期したマスタークロックを入力できればLRCKとマスタークロックが整数比になりますから、音質向上が期待できます。 かと言って、LRCKからPLLでマスタークロックを作るのは本末転倒です。

更新日

2023年5月25日 初出


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