スピーカーユニットの共振と電流駆動

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説明

電圧駆動派は、スピーカーユニットの共振現象を『インピーダンス線図』とかいうグラフにして考えています。

「このインピーダンス線図によると、共振周波数ではスピーカーユニットのインピーダンス絶対値が上昇するから定電圧駆動すると電圧が高くなりすぎて共振をさらに増加させてしまう」というのが彼らの主張です。 ここでは、電圧駆動派の主張が間違っていて、電流駆動では共振周波数で何の問題も無いことを示します。

ここでは大学理工学部で習う知識を前提として、習わなかったことまで考察します。

フレミングの右手法則、左手法則

電磁気学では、フレミングの右手法則とフレミングの左手法則が成立します。 発電の時(力学エネルギーが磁力を仲立ちに電気エネルギーに変わる時)は右手法則です。 逆に電気エネルギーでコイルを力学的に動かすときは左手法則です。

重要な点は1つです。 共振周波数では右手法則と左手法則のどちらが起きているのでしょうか?

大学で習わなかったことですが、実は右手法則も左手法則も同じことを言っています。 磁束密度と電流が同じ値をとっている時、電気エネルギーが導体の加速に使われるならば左手法則で、減速する代わりに電気エネルギーを取り出せるならば右手法則なのです。 エネルギー的に平衡状態では、電気エネルギーと力学エネルギーの間に行き来はありませんが、電磁気学的にバランスが取れています。

エネルギーの平衡状態

見方を変えてみましょう。 共振状態で、スピーカーユニットのスプリングがコーン紙を加速してフレミングの右手法則による発電が行われるとしましょう。 この時発電で流れる電流は、電流駆動アンプが流そうとする電流と同じです。 では、電圧駆動派が言うように電流に電流が足されてスピーカーユニットがさらに加速されるのでしょうか。 いいえ、違います。 電流駆動アンプだから流れる電流が決まっていて、電流が2倍になるわけがありません。 発電電流と同じ電流をアンプが流そうとします。 発電とアンプ側の都合が一致して、流れる電流が決まります。 スピーカーユニットとアンプの間では、エネルギーのやり取りが発生しません。

エネルギーのやり取りが発生したと考えてもいいですよ。 電流の半分が発電によるもので、残り半分がアンプから提供されたエネルギーだとしましょう。 発電で導線を減速させる力と同じだけ、電気エネルギーが導線を加速しています。 発電とアンプが供給するエネルギーも相殺します。 結果は同じです。

発電3割の、アンプから7割だったらどうなるかって? 短期的には、アンプからスピーカーユニットへエネルギーが供給されるので振幅が増えそうです。 でも振幅が増えると、右手法則による発電量も増加して電流がアンプの出力とバランスしなくなりますね。 電流駆動がNFBとして働き、振幅は本来の値に収まります。

スピーカーユニットへのエネルギーの追加がないので、電圧駆動派が主張する過剰駆動は発生しません。 厳密には、スピーカーユニットの摩擦や空気振動として失われるエネルギーがあるので、共振が減衰振動になり、減衰分だけアンプから補充されます。

科学者やめますか?(三菱電機社員のように)

電圧駆動派が言っていた「ドンシャリ」も「底づき」も電流駆動で発生しない理由に納得していただけたでしょうか。 それとも、あくまで物理学に反対して地下に潜って『電圧駆動』を主張し続けますか? 音響工学者が物理学に反する『とんでも』を主張し続けるなら、テロリスト認定してあげましょう。

掲載日

2020年1月17日 初出


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