お手軽に疑似バイノーラル再生を試してみました。 簡単な作業の結果、多少の効果がありましたので報告します。
疑似バイノーラル再生を説明するには、「バイノーラル再生」と「バイノーラル再生の疑似」について説明する必要があります。 詳細な技術説明は、ネットを検索したほうが早そうなので、ここでは簡単な説明だけします。
スピーカー再生をすると、右の耳には左右のスピーカーからの音が届きます。 スピーカーからの距離が違うので、左のスピーカーからの音は遅れますし、音量が小さくなります。 左の耳では、左右逆転して同じことが起きます。
ヘッドフォンで聴くとき左右の耳に届く音は、右チャネルだけ、左チャネルだけになるので、スピーカー再生と違う感じになります。 そこでヘッドフォン再生時に、左右のチャネルの音を上手にミックスしてみましょうというのがバイノーラル再生です。 本格的な手法には、ダミーヘッドマイクを使用した録音などもあります。
擬似的にバイノーラル再生するとは、お手軽な方法で左右チャネルの音をミックスして聴いてみることです。 ダミーヘッドマイク方式に比較すると、効果は落ちますが、お手軽にできるところが利点です。
自作のフルデジタルアンプは、CDDAを再生するとき352.8kHzにアップサンプリングしてFIRを通してからΔΣ変調をかけています。 FIRから出てきた32bit浮動小数点数に細工してみました。
右チャネルに、遅らせた左チャネルの音を加算しました。 遅れは約1msecで左チャネルの音を0.9倍しています。 加算した後で、オーバーフローしないように加算結果を1.9で割りました。 この後で、ΔΣ変調をかけています。 左チャネルも同様です。
ストレートにヘッドフォン再生すると、音場はリスナーの頭を中心に左右の直線状に広がります。 トンネルの奥でトンネルの壁に向かって立ち、左右に楽器が並んでいるような感じです。 リバーブもトンネルにいるように聴こえます。
疑似バイノーラル再生では、音場が広がります。 ただし、各楽器やヴォーカルの音が一点には定位しません。 先のトンネルの例で言うと、リスナーから一定距離のトンネル内壁にへばりついているように聴こえます。 トンネルの直径も広がりました。 でも上下、前後の定位がないので、トンネル内に帯状にスピーカーが配置してあるかの様に聴こえます。
ふと思いついて、ライブ盤CDを聴いてみました。 オーデイエンスの拍手、歓声、歌声が広場から聴こえてくるようなかんじです。 ライブ盤では、疑似バイノーラルの効果が大きいです。
左右チャンネルをミックスするときの、ディレイや係数は、webmasterがエイヤッと決めました。 この数値をチューンすると、効果が大きくなるかもしれません。 あるいは、リスナ一人ひとりに合わせてチューニングする必要があるかもしれません。 興味を持った方は、追実験とパラメーターの追い込みをやってみてください。
2018年8月7日 初出