コラム 写真は図鑑に向かないか
バードウォッチャーが携帯する図鑑として、バイブル扱いされているのが、
日本野鳥の会発行の「フィールドガイド日本の野鳥」です。
この本が薦められる理由は、多くの野鳥を取り上げていることと、
野鳥がイラストで載っていることです。
ですが、私はこの本はバードウォッチングに慣れた人向けであって、
初心者には向かないと思います。
その理由は、図鑑に載っている鳥にたどり着くためには、
その鳥の名前か種類がわかっていないといけないからです。
初心者は自分が見た鳥のサイズや色は言えますが、
何という鳥かどんな種類かなどはわからないものです。
そのため、鳥のサイズ、色、観察地などを索引から引けるようになっている
図鑑の方が初心者向けです。
また、イラストで鳥を表現している点も気になります。
イラスト図鑑を推薦する人は、以下のような点を長所として挙げます。
- 写真はよほどうまく撮らない限り、日陰になったりして見えない部分ができる。
- 写真は特定の個体だけを写すので、
その種が持つ特徴をうまく表現しているかどうかわからない。
例えば、キムタクは日本人ですが、日本人の代表としてキムタクだけが図鑑に載るのは適当ではないでしょう?
- イラストは特徴を誇張して書くことができる
- 滅多に人前に姿を現さない野鳥でも、
イラストなら死体から想像して書くことができる
でも、本当に写真がだめなのでしょうか。
写真の方が事実を的確に表現できることも多いです。
また、種の特徴といっても、
実際の鳥はイラストのように顕著に現れないことも多いです。
写真なら、
少なくともそこに写っている個体が存在する(過去に存在した)ことは確かです。
こんな例を考えてみましょう。尾と足と頭に特徴のある種がいたとします。
尾が白い個体が60%、黒い個体が40%、足がピンクの個体が60%黄色の個体が40%、
頭が逆立っている個体が60%とさかのある個体が40%です。
あなたがこの種のイラストを一つだけ描くとしたらどんな特徴にしますか。
たぶんたいていの人が尾が白く、
足がピンクで頭が逆立っているイラストを描くと思います。
しかし、尾が白くて足がピンクなら必ず頭がとさかになっている種類かもしれません。
数字の上ではその可能性がありますから、調べてみる必要があります。
ちょっと、数学のセンスがない人には難しかったかな。
そんなわけで、私は写真を採用した図鑑がイラスト図鑑より劣っているとは考えません。