はじめに
CCCD という CD もどきのフォーマットがあります。
制作側にいわせると、「パソコンでのコピーを禁止した特殊なCD」だそうですが
実際は使えないフォーマットです。
ここでは、CCCD について、個人的に調べた結果について発表します。
CCCD が来た
CCCD なんて、私には関係ないフォーマットだと思っていました。
BoA や宇多田ヒカルや浜崎あゆみの新譜がどうなろうが、
私の知ったことではないからです。
ところが、この間入手した personz の 14枚目のアルバム
HOME COMING を開けてびっくりしました。
なんとこれもCCCD なのです。
自宅に持ち帰るまで気づきませんでした。
CCCD といえば、Avex のように派手な警告文句が付いてるはずだし、
なにより自分のお気に入りのアーティストとは
関係ないものだと思っていましたから。
しかし、入手してしまったからには、対処を考えなければなりません。
そのような経緯で、このページを書きました。
私が CD リッピングする訳
私は、著作権法の許す範囲内で積極的に CD リッピングをします。
その理由は以下のとおりです。
- 再生時に CD に傷を付けるプレーヤーへの対策
うちにあるCDは、
再生時や人に貸したときに傷が付いたものがたくさんあります。
このあいだも、傷のせいで再生不可能になったディスクを、
研磨してもらって再生できるようにしました。
研磨作業も、業者までディスクを持っていく時間や料金がばかになりません。
CD-R でバックアップをとっておいた方が良いです。
- 短いCDを1枚のディスクにまとめるため
Echoes of Youth のように、
アルバムを出す前に活動停止してしまうアーティストも少なくありません。
そのようなアーティストの曲をまとめて聞くために、
複数の CD シングルを1枚の CD-R にまとめることはよくします。
あと、hitomi と cune の SAMURAI DRIVE を1枚の CD-R にまとめて、
続けて聞いたりもします。
- 自分だけの選曲を楽しむため
自分だけの選曲でベスト盤を作ることは、だれでもしますよね。
HOME COMING の再生状況
まずは手近のCDプレーヤーに片っ端から HOME COMING を入れてみて、
再生状況を確認しました。
その結果、私の手近にあるプレーヤーでは、
パソコンをのぞいて再生できることがわかりました。
確認した機種は以下のとおりです。
型番 | 説明 |
Pioneer CLD-99S | LD CD コンパチプレーヤー |
SANSUI CD-X77 | ミニコンポのCDプレーヤー |
SONY SCPH-7500 | 旧プレイステーション |
SONY SCPH-15000 | プレイステーション2 |
SHARP MD-F220 | ポータブル MD CD プレーヤー |
Pioneer DV-U7 | DVD プレーヤー |
2003年7月現在追加情報が入りました。
CCCD をくり返し普通のCDプレーヤーで再生していると、
ドライブのサーボが過負荷でこわれるようです。
CDプレーヤーのサーボって、回転系とピックアップ系があるけど、
CCCD の原理からいってダメージを受けるのは回転系でしょう。
そういえば、我が家の DV-U7 も最近調子が悪いけど、
CCCD を再生させているから保証はきかないんだろうな。
HOME COMING を読み出せない CD-ROM ドライブ
つぎに、CD-ROM ドライブをいろいろと試してみました。
以下のドライブでは、HOME COMING の CDDA トラックを正常に読み出せません。
読み出しソフトに EAC や CloneCD3 を使ってもダメです。
型番 | 説明 |
Gateway SOLO2150 の内蔵 CD-ROM | 薄型 IDE CD-ROM |
PANASONIC LK-RB7503Z | SCSI2 CD-R ドライブ |
RICOH RW9120 | DVD-ROM/CD-RW コンボドライブ |
SAMSUNG SD-612 | DVD-ROM/CD-ROM ドライブ |
LITEON LTD163 | DVD-ROM/CD-ROM ドライブ |
Pioneer DVR-104 | DVD-RW ドライブ |
HOME COMING を読み出せる CD-ROM ドライブ
以下のドライブでは、
HOME COMING のCDDA トラックを正常に読み出せます。
OS や読み出しソフトを選ばないので、
Linux でリッピングすることもできました。
RAW モードは使わずに、CDDA を普通に読み出します。
型番 | 説明 |
NEC NR-9200A | CD-RW ドライブ |
HOME COMING の音質
CCCD は、データにわざとエラーを書き込んでいるので、
おなじものを普通のCDとして作成した場合より音が悪いと聞きました。
そこで、オリジナルの HOME COMING と、
CD-R にコピーしたものを聞き比べてみました。
結論からいうと、私には違いがわかりません。
CD から CD-R へのコピーでも音質が劣化すると聞きますから、
CCCD よりも音が良くなって、 CD-R にコピーした時点で悪くなって、
相殺されたのでしょうか。
そんな単純な話じゃない?
まあ私の耳は、
CD-R の書き込み速度による音質の変化を聞き分けられませんから、
あまりあてにはなりません。
逆にいうと私にとっては、
違いが聞き分けられないので CCCD でも音質的にはOkです。
MP3 や ATRAC や 1bit D/A の音の悪さは、よくわかるんだけどなあ。
CCCD の音質に否定的で MP3 をよく聴く人を知っていますが、
どういう耳をしているんだろう?
2002年11月10日現在、追加情報が入りました。
CCCD の音質は、再生プレーヤーによって変わるそうです。
これは、エラーの出方と訂正方式がプレーヤーによって違うからだそうです。
そのため、特定のプレーヤーでCCCDが良い音だったとしても、
別のプレーヤーではひどい音になる可能性があります。
ますます、使えないフォーマットですね。
CCCD についてわかったこと
CCCD は、決してプロテクトのかかったCDではありません。
その根拠は、以下のとおりです。
- 自分では確認できなかったが、
普通のCDプレーヤーで再生できない機種がある
- CCCD の再生を保証したドライブがこの世に存在しない
- CD プレーヤーメーカーは CCCD を再生するなと言っている
- CD-ROM ドライブにかけると、
正常に読めるものも読めないものもある
- 再生可能なCDプレーヤーのディジタルアウトから、
ディジタルコピー可能である
まあ、
結果の予測の付かない不安定なフォーマットというところでしょうね。
ところで、海外から逆輸入したCDも、CCCDになっているのでしょうか。
個人的な意見ですが、音楽にプロテクトをかけたいのなら、
DVD Audio, SACD, DVD Video あたりを使った方が良いと思います。
私も 96KHz 24bit sampling のバンドサウンドを、早く聴いてみたいです。
もっとも、我が家のアンプがそこまで再生できないかも知れないけれど。
著作権について
ここでは、意図的に著作権についての記述は避けてきました。
節操の無い複製行為によって、
受け手側が質の良い著作物を入手できる機会を失うのは事実です。
しかし、法律で認められた個人的複製の権利や中古売買に対して、
まるで悪いことをしているかのように宣伝する業界の態度はいただけません。
最近目にした記事に「レーベル側が消費者を泥棒扱いしている」
という記述がありましたが、まったくその通りだと思います。
著作権に関する話題をちょっと並べてみます。
音楽に限らず、プログラムや書籍の著作権も含みます。
- 作詞作曲した著作権者が、
自分の楽曲を使うのに以前所属していたレーベルに
許可をとって金を払わなければならない話とか
- 中古CD屋に放送局向け非売品CDや、
インディーズバンドのデモCD-Rが流れてくる話とか
- 数年前にリリースしたCDをさっさと廃盤にしてしまう話とか
- ビデオの
コピーガード信号のせいで
レンタルビデオが見られなかった話とか
- 業界の著作権ばかり守られて、
アマチュアの自主制作音源の著作権を守る方法が無い話とか
- 違法コピーがけしからんと記者会見したオッサンの自宅に
CDがほとんど無い話とか
- 音楽業界の人間が著作権を無視してコピーし放題の話とか
- 10代の財布に依存した音楽業界のもろい構造の話とか
- 聴き捨ての流行歌を大量生産している業界の体質の話とか
- 日本人アーティストのCDに
国内と海外で価格差があることとか
- 不景気による売り上げ減を、
違法コピーや合法中古販売のせいにしている話とか
- 売れ筋の曲ばかり
ラジオでヘビーローテーションしておきながら、
「売れる曲と売れない曲の差が激しい」と嘆いてみせたり
- 法律を無視して
「あらゆる複製行為が違法である」かのような注意書きをつけたり
- 市販の CD音源からメガミックス作ったり、
サンプリングして別の曲にしたり、
業界人はやりたい放題で著作権料も払わないのに、
素人からは厳しく取り立てるのはなぜ
- 作者没後数百年経つ
『鳥獣戯画』の著作権を主張しようとしたり
- 私の著作物が無断で雑誌に載ったり、某オーディオ会社
内で海賊コピーされた話とか
- 本来の著作権者ではなく
販売会社に金が集まるようになっているシステムの話とか
- CD だ DVD だディジタル放送だと
新しいメディアが出てくるたびに、
それまで楽しんでいた作品を観賞する手段が無くなってしまう話とか
- 私にプログラム作成を依頼した会社
に
「このソフトは数が出そうだから印税契約したい」と言ったら、
「ふざけるな」と言われた話とか
- そのソフトの添付マニュアルに製作スタッフ欄があったので、
「私の名前も入れて欲しい」と言ってもだめだった話とか
- 「ソフトが高価なのは、
著作権者への正当な報酬のためです」と宣伝している会社
の CD-ROM に傷がついてしまったので
「私は既に著作権料を支払っているのだからメディア代だけで交換して欲しい」
と言ったら、「もう一枚買い直せ」と門前払いをくった話とか
- 出版社
に頼まれた原稿を出したのに、本が出なかったので
原稿料をもらえなかった話とか
- 「数年前に書いてもらった原稿で本を出したいが、
原稿を無くしてしまったのでもう一度書いて欲しい」と言われた話とか
- パッケージソフトや書籍の原稿を
山程書いて再販もされたけど、印税を受け取ったことは一度もない話とか
- プログラム開発を依頼して来た会社に
開発ツールを用意するように頼んだら、「自前で用意しろ」と言われて、
「それなら開発ツールが購入できるだけのギャラを請求するぞ」
と言い返したら、結局開発ツールの違法コピーを渡された話とか
- 「米国産のシステムに漢字表示機能を追加してください」
と言われて、 「漢字のフォントデータをください」
と依頼したら、「PC-9801 の漢字 ROM から読みだしてください」と言われた
話とか
- 某社(元財閥系のケチで有名な会社
)に入社した直後に、
そこで TeX の出力に大日本フォントを無断使用していることに気づき
「使用料を払わなくていいんですか?」ときいたら、
「俺たちが少ない予算をやりくりしているのに、お前はなんて事を言うんだ。」
と説教された話とか
- パッケージソフトの試作品を作って売り込みに行くと、
「この手の製品は売れないんだよねぇ。」
と言われて不採用になるんだけど、
試作品の入ったメディアを返してくれない会社が多いこと。
メディアを返してくれても、裏でコピーされていない保証はないんだけど。
おまけに、数ヵ月後にそっくりな商品が発売されたりして。
- 某オーディオ会社
でカラー画像のデモンストレーションプログラムを作った時、
「ウォークマンのカタログの表紙をスキャンして使おう。」と言われて、
「カメラマンの著作権やモデルの肖像権の問題があるからダメですよ。」
と反論したら、「わが社のカタログなら大丈夫。」と係長
に指示されたことがあった。
その後営業から「これは著作権と肖像権侵害だ。」と私に文句がきたけど、
そういう話は係長と営業の間でやって欲しかった。
- 著作権保護を目的に設立されたはずのACCSに、
大手企業が個人の著作権を無視した事例を訴えても
取り上げてもらえないこととか
書き出すときりがないので止めておきます。
ただ一つ言えることは、CCCD の採用や中古販売の敵視をする前に、
業界の体質改善をして営業努力しない限り収益は減り続けるということです。
ちょっと脱線
実は、音楽業界の凋落が、
私の働くIT業界の凋落の仕方と似ているところがあるのです。
具体的には、
- 優れた著作物を産み出す能力を持った人を
干して、安い給料で質の悪い著作物を大量生産させる業界
- 本来の著作権者がいくら優れた仕事をしても、
評価されないところ
- 質の悪い仕事を大量生産する
↓
消費者が金を払う気を無くす
↓
消費が冷え込む
↓
最初に戻る
という悪循環におちいっている
- マーケットシェアを奪い合うことには夢中になるのに、
市場のパイを広げようと努力している人の足を引っ張る者が多いこと
- 著作権を声高に叫ぶものほど、
自分では何も作れず他人の成果に寄生してくらしていること
などです。